過多月経とは
経血量(生理の量)が非常に多く、ふだんの生活に支障をきたすような場合を「過多月経」といいます。
では、異常に多いとはどの程度のものを指しているのでしょうか。
例えば…
昼間でも夜用ナプキンが必要
ナプキンを1時間ごとに取り替えなければならない
月経血にレバー状の大きな塊が混じる
ナプキンとタンポンの併用が必要
経血が漏れるのが心配で外出できない
などの場合、過多月経と考えられます。
医学的には1回の月経周期での出血量が150ml以上を言います。しかし、実際には経血量をはかるわけではなく、上記のような患者の訴えに基づいて診断されることが多いです。
過多月経の結果、日常生活に影響を及ぼすだけでなく、鉄欠乏性貧血がみられることも多くあります。
Iron-deficiency anemia
過多月経による鉄欠乏性貧血の症状
立ちくらみ、めまい
動悸、息切れがする
つかれやすい、身体がだるい
頭痛、頭が重い
鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄が不足し、全身に酸素を運ぶヘモグロビンが十分に作られないことにより生じる貧血です。過多月経では毎月多量の出血により貧血になっていきます。この場合の貧血はゆっくり進行していきますので、身体が貧血状態に慣れてしまい、自覚症状に乏しく注意が必要です。健康診断などで貧血を指摘されたら、是非一度産婦人科を受診してください。
Cause
過多月経の原因
子宮腺筋症
子宮内膜によく似た組織が子宮の筋層内にできてしまう病気です。子宮筋腫の場合はこぶができますが、子宮腺筋症の場合はこぶは見られず、子宮全体が厚く大きくなっていきます。なかには子宮筋腫との鑑別が困難なものもあり、手術で摘出してはじめて子宮腺筋症と診断されることもあります。子宮筋腫や子宮内膜症と合併も多く見られます。
子宮腺筋症について詳しくはこちら子宮内膜ポリープ
ポリープとは、粘膜が増殖してできたキノコ状のやわらかい突起のことをいいます。多くは良性ですが、まれに悪性のことがありますので注意が必要です。
黄体機能不全などのホルモン分泌の異常
10~20歳代の若年層や閉経前の40歳代など、ホルモンバランスが乱れやすい年代に多くみられます。
血液疾患
フォン・ヴィレブランド病、特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura:ITP)など血が止まりにくい病気の場合も過多月経になります。
Treatment
過多月経の治療
IUS(ミレーナ)
IUSとは、Intra Uterine Systemの略で、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システムです。IUS(ミレーナ)を子宮の中に挿入して使用します。子宮内膜に直接使用して、子宮内膜増殖を抑えることにより月経血量を減少させたり、月経痛を緩和します。主に出産経験のある人に使用します。副作用としては、月経出血日数の延長や不正出血、ミレーナの脱出・穿孔、骨盤内炎症性疾患などがあります。一度挿入すると最長で5年間効果が持続します。
IUS(ミレーナ)について詳しくはこちらLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)
ヤーズ・ヤーズフレックスなど。LEPは排卵を抑え、エストロゲン・プロゲステロンの変動を抑え、子宮内膜の増殖を抑制することにより、経血量を減少させたり月経痛を緩和させたりします。副作用としては、吐き気、頭痛、不正出血などがあります。また、まれに血栓症が起こる可能性があります。
黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト)
子宮腺筋症・子宮内膜症の治療に使用します。病巣に直接働き子宮内膜の増殖を抑えることにより、経血量を減少させたり、月経痛を緩和させたりします。副作用として、不正出血や更年期障害のような症状がみられることがあります。
GnRHアナログ(レルミナ・リュープリン・スプレキュア)
40代後半の閉経が近い人に、子宮筋腫の治療として使用されます。エストロゲンを減少させて、閉経状態にする「偽閉経療法」とよばれています。副作用として、不正出血、ほてり・のぼせなど更年期障害症状、骨密度の低下などがみられることがあります。
外科的治療
保存手術(子宮筋腫など病巣だけ切除)、根治手術(子宮卵巣卵管を全て摘出)、子宮内膜掻爬術、子宮内膜焼灼術など。
貧血治療
鉄欠乏性貧血に対して鉄剤を投与します。しかし、貧血治療だけでは根本的解決とはなりません。内科で漫然と貧血治療を続けている患者さんを見かけることがありますが、貧血の原因となっている過多月経の治療をしたほうが良いと思われます。