〜日本の働く女性の約8割が「仕事に支障」〜
■ 月経困難症とは
月経困難症(生理痛が強く、日常生活に支障が出る状態)は、日本の女性の約50〜90%が経験する非常に一般的な症状です。
特に20〜40代の働く女性では、約30〜40%が「仕事に支障が出るほどの痛み」を抱えていると報告されています。
日本の女性人口(15〜49歳)は約2,500万人。 そのうち、月経困難症で「生活や仕事に支障が出るレベル」の女性は、推計で約750万〜1,000万人にのぼります。
■ 月経困難症が仕事に与える具体的な影響
1. 集中力・判断力の低下
強い生理痛、頭痛、腰痛、吐き気、倦怠感などの症状は、 脳の認知機能を低下させることが医学的に確認されています。
- 集中が続かない
- 判断が遅くなる
- ミスが増える
- 会議や作業に集中できない
これは「気合い」や「我慢」で解決できるものではなく、痛みが脳の働きを抑制する生理学的な現象です。
2. 出勤しているのに生産性が落ちる(プレゼンティーズム)
日本医療政策機構(HGPI)の調査では、 働く女性の79.7%が「月経・更年期症状で仕事の生産性が落ちた」と回答しています。
具体的には:
- 作業スピードが落ちる
- いつもより疲れやすい
- 集中できず効率が下がる
- 体力が続かない
この「出勤しているのにパフォーマンスが落ちる状態」をプレゼンティーズムと呼びます。
3. 欠勤・早退・遅刻の増加(アブセンティーズム)
働く女性の7.0〜8.8%が、月経関連症状で欠勤・早退・遅刻を経験しています。
直近3か月の平均では:
- 2〜3日欠勤
- 2〜5時間の労働時間短縮
痛みが強い日は、通勤や立ち仕事が困難になり、 どうしても休まざるを得ないことがあります。
▶ 日本全体の経済損失(年間):約2兆2,963億円
- 出勤しているのに生産性が落ちる(プレゼンティーズム)による損失:約1兆9,724億円
- 欠勤(アブセンティーズム)による損失:約3,240億円
→ 最大の損失は「出勤しているのに生産性が落ちる」状態です。出勤しているのに生産性が落ちる(プレゼンティーズム)による損失は、欠勤(アブセンティーズム)による損失の約6倍以上です。これは企業にとっても、大きな経済的ダメージとなります。
4. 職場で言いづらいことによるストレス
「生理痛で休みたいと言いづらい」 「周囲に迷惑をかけてしまう気がする」 「理解してもらえないかもしれない」 こうした心理的ストレスは、痛みや不調をさらに悪化させます。日本では月経に関する職場の理解が十分とは言えず、女性の健康課題が“見えない問題”として放置されがちです。
■ なぜ月経困難症は仕事に大きな影響を与えるのか?
① 発症頻度が高い
働く女性の約半数以上が月経困難症を経験。
② 毎月繰り返すため慢性化しやすい
症状が月に数日〜1週間続き、年間を通じて生産性を下げる。
③ 痛みが過小評価されやすい
「我慢する文化」「職場で言いづらい」ため、治療介入が遅れがち。
④ 適切な治療を受けていない女性が多い
OC/LEPの利用率は欧米より低く、「治療すれば改善する痛み」を放置しているケースが多い。
■ 治療で仕事のしやすさは大きく改善できます
月経困難症は、適切な治療で痛みを軽くし、仕事のパフォーマンスを改善できる疾患です。
一般的に用いられる治療
- 低用量ピル(OC/LEP)
- ミレーナ(IUS)
- 漢方
- 鎮痛剤の適切な使用
- 子宮内膜症など原因疾患の治療
治療によって、「毎月つらい」から「普通に働ける」状態へ改善する女性が多くいます。
■ 企業にとっても重要な健康課題
月経困難症は、個人の問題ではなく企業の生産性にも直結する課題です。
企業側の損失
- 生産性低下
- 欠勤による業務調整コスト
- 離職リスクの増加
- 管理職の負担増加
女性活躍推進や人的資本経営の観点からも、 月経困難症への理解と支援は不可欠です。
■ まとめ
- 日本の働く女性の約30〜40%が「仕事に支障が出るほどの生理痛」を経験
- プレゼンティーズムによる経済損失は年間約2兆円
- 月経困難症の女性は医療費が約2〜3倍
- 適切な治療で仕事のパフォーマンスは大きく改善
- 企業にとっても重要な健康課題
月経困難症は、適切な治療で痛みを軽くし、仕事のパフォーマンスを改善できる疾患です。
当院では、症状やご希望を伺いながら、最適な治療をご提案しています。我慢せず早めに診察にお越しください。

【プレゼンティズム・アブセンティズムとは】
プレゼンティズムは「体調不良やメンタル不調を抱えながら出勤し、十分なパフォーマンスを発揮できない状態」。アブセンティズムは「体調不良などで欠勤・遅刻・早退し、職場に不在となる状態」。どちらも企業の生産性に影響する健康経営の重要概念です。
プレゼンティズムとは
- 出勤はしているが、心身の不調で本来の力を発揮できない状態。
- WHOが提唱した「健康問題によるパフォーマンス損失」を示す指標。
- 例:頭痛、花粉症、睡眠不足、腰痛、ストレス、月経痛、軽度のメンタル不調など。
- 外見上は働けているため周囲が気づきにくく、“見えない損失”として企業に大きな影響を与える。
特徴
- ミス増加、集中力低下、作業効率の悪化
- 本人も「働けている」と思いがちで、問題が表面化しにくい
- 慢性化するとメンタル不調や離職リスクにつながる
アブセンティズムとは
- 体調不良やメンタル不調で欠勤・遅刻・早退し、職場に不在となる状態。
- 休業が可視化されるため、企業側が把握しやすい。
- 例:感染症による欠勤、うつ病による休職、怪我での長期離脱など。
特徴
- 人員不足による業務停滞
- 他の従業員の負担増
- 組織全体の効率低下
両者の違い(比較表)
| 項目 | プレゼンティズム | アブセンティズム |
| 状態 | 出勤しているが不調でパフォーマンス低下 | 欠勤・遅刻・早退で職場に不在 |
| 把握のしやすさ | 見えにくく把握困難 | 勤怠で可視化され把握容易 |
| 企業への影響 | “見えない損失”が大きい | 人員不足による直接的損失 |
| 主な原因 | 慢性疲労、花粉症、腰痛、ストレス、PMSなど | 重篤な病気、怪我、深刻なメンタル不調 |
なぜ重要なのか
- 日本ではプレゼンティズムによる損失が数兆円規模と試算されるほど影響が大きい。
- 高齢化・人手不足の中、一人ひとりの生産性向上が企業の持続性に直結。
- 健康経営の評価指標としても重視されている。
- 「自分が休むと現場が回らない」と考え、無理して出勤
- 慢性的疲労・睡眠不足・腰痛・肩こりなどがパフォーマンス低下を招く
- メンタル負荷が蓄積しやすい(夜間対応、緊張度の高い業務)
企業運営の観点では、 スタッフのプレゼンティズムを早期に察知し、柔軟な勤務調整や相談しやすい環境づくりが特に重要になります。(月1面談、簡易チェックシート、業務量の見える化など)