卵巣は、子宮の左右に1つずつあるうずらの卵くらいの大きさ(2~3㎝)の臓器です。
ここに発生した腫瘍を卵巣腫瘍といいます。卵巣腫瘍の大きさは様々ですが、20㎝以上と巨大なものもあります。約90%は良性腫瘍ですが、悪性腫瘍(卵巣がん)・境界悪性腫瘍のこともあります。卵巣腫瘍の中で、卵巣にいろんな液体が溜まって卵巣が腫れたものを卵巣嚢腫といいます。
症状
- 初めのうちは、ほとんど無症状です。
- 大きくなると、腹部膨満感、下腹部痛、頻尿などの症状がみられます。しかし、ポッコリおなかは、太ったせいだと勘違いしてしまう人が多いです。
- 腫瘍が破裂したり、卵巣腫瘍茎捻転といって腫瘍の付け根がねじれてしまうと、突然の強い下腹部痛が現れ、緊急手術になることもあります。
検査
経腟超音波検査
ほとんどは、経腟超音波検査でみつかりますが、腸管ガスの影響で見えにくくなることもあり、ときに見落としてしまうことがあります。性交渉を経験したことのない方は、経腟超音波検査できません。
MRI検査
MRI検査は、超音波検査より正確に詳細にみることができ、悪性腫瘍との鑑別に有用です。
腫瘍マーカー
CA125、CA19-9、CA72-4などを調べます。腫瘍マーカーが高値の場合悪性腫瘍の可能性が高くなりますが、スクリーニング検査としての有用性は否定的です。
治療
卵巣腫瘍の良性か悪性かの鑑別は必ずしも容易でなく、6cm以上のものや、内部に充実性部分がある場合は、手術治療が原則です。
良性腫瘍の場合
良性腫瘍の場合は、腫瘍の部分だけを摘出し、正常部分は温存することが多いです。卵巣腫瘍の大きさや周囲との癒着、患者さんの年齢などにより、卵巣腫瘍を卵巣ごと摘出することもあります。また近年多くの施設では体への負担が小さい腹腔鏡手術が行われています。
悪性腫瘍の場合
悪性腫瘍の場合は、がんの種類と広がり進行期により術式・治療法が異なりますが、手術によりできるだけがんを取り除き、術後抗がん剤治療にてがん細胞の消滅を目指します。
種類
非常にいろいろな種類がありますが、発生頻度の多いものは以下の3つです。
1
皮様嚢腫(成熟嚢胞性奇形腫)
皮脂や髪の毛や骨や歯などが含まれる良性の腫瘍ですが、まれに悪性化することもある注意が必要です。
2
漿液性嚢胞腺腫
単房性のことが多く、中に淡黄色の水っぽい液体が溜まっています。
3
粘液性嚢胞腺腫
多房性のことが多く、中に粘液が溜まっています
以下は、よく見る卵巣嚢胞ですが、
卵巣腫瘍ではありません
チョコレート嚢胞
卵巣に子宮内膜症が発生すると、月経毎に出血が卵巣内に貯まり嚢胞が出来ます。この嚢胞の内容物は古い血液のためチョコレート色の液体で、チョコレート嚢胞と呼ばれています。チョコレート嚢胞は不妊症の原因になりますし、大きくなると卵巣がんが発生することがありますので治療・経過観察が必要です。
チョコレート嚢胞について詳しくはこちら機能性嚢胞
ホルモンの影響で一時的に卵巣がはれたもので、ほとんどは数か月以内に自然に消失します。治療の必要はなく経過観察で良いでものです。