GSM
閉経関連尿路性器症候群
閉経前後の女性に多い「腟の乾燥」「性交痛」「頻尿」「尿もれ」「膀胱炎の繰り返し」。
これらの症状は、実は GSM(閉経関連尿路性器症候群) という一つの原因から起こっている可能性があります。
近年、国際的にも日本でも「萎縮性腟炎」という呼び方に代わり、
腟だけでなく尿道・膀胱の症状まで含めた“包括的な概念”としてGSM(閉経関連尿路性器症候群)が推奨されています。
ここでは、GSMの原因・症状・治療法をわかりやすく解説します。
■ GSM(閉経関連尿路性器症候群)とは?
GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)とは、閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)低下によって、腟・外陰部・尿道・膀胱に起こるさまざまな症状の総称です。
従来の「萎縮性腟炎」は腟の炎症に焦点を当てた名称でしたが、
実際には尿道や膀胱にも同時に変化が起こることがわかり、より広い概念としてGSMが使われるようになりました。
■ GSMの主な症状(3つのカテゴリー)
① 腟・外陰部の症状
- 腟の乾燥・ヒリヒリ感
- 外陰部のかゆみ・灼熱感
- おりものの減少
- 腟の痛み・違和感
- 微量の出血
- 腟口が狭くなる・粘膜が薄くなる
② 性機能に関する症状(性交痛)
- 挿入時の痛み(性交痛)
- 濡れにくい
- 性交後の出血
- 性感の低下
③ 排尿に関する症状(尿路症状)
- 昼間頻尿
- 尿意切迫感
- 夜間頻尿
- 尿もれ(腹圧性・切迫性)
- 排尿困難
- 残尿感
- 排尿時のしみる感じ
- 膀胱炎を繰り返す
■ GSMの特徴(知っておきたいポイント)
① 慢性・進行性で自然改善しにくい
GSMは放置しても自然に治ることはほとんどありません。
② 閉経後女性の50〜70%が経験
多くの女性が悩んでいるにもかかわらず、相談しづらい症状です。
③ 閉経以外でも起こる
- 授乳中
- 乳がん治療中(抗ホルモン療法)
- 卵巣摘出後
など、エストロゲンが低下する状況でも発症します。
■ GSMの治療法
① 局所の保湿ケア
デリケートゾーン用の保湿ゼリーや保湿クリームを使用し、局所の乾燥を改善します。
副作用が少なく、誰でも始めやすい治療です。
② 局所エストロゲン療法(エストリール腟錠)
腟内に少量のエストロゲンを補充する治療で、
GSMに最も効果が高い治療法とされています。
改善が期待できる症状
- 腟の乾燥
- 性交痛
- 頻尿
- 膀胱炎の予防
※乳がん治療中の方は、主治医と相談が必要です。
③ 全身的エストロゲン療法(HRT:ホルモン補充療法)
HRTは「腟の乾燥」「性交痛」などGSMの症状が改善するだけでなく、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)、発汗、動悸などの更年期障害の症状の改善、睡眠の質・イライラ・抑うつなどの改善、骨粗鬆症の予防にもなります。
➃ 生活習慣の工夫
- きつい下着を避ける
- 保湿を習慣化する
- 性交時にリューブゼリーなどの潤滑剤を使用する
- 石けんの使いすぎを避ける
日常の工夫も症状改善に役立ちます。
※ 腟・外陰部レーザー治療:腟粘膜を刺激し、コラーゲン生成を促すことで潤いを改善するという治療ですが、安全性・有効性に対して十分なエビデンスがなく、2026年産婦人科診療ガイドラインでは削除されました。
■ 萎縮性腟炎との違い
| 用語 | 意味 | 現在の扱い |
| 萎縮性腟炎 | 腟粘膜の萎縮による炎症 | GSMの一部 |
| 老人性腟炎 | 旧称 | ほぼ使用されない |
| GSM | 腟・外陰部・尿道・膀胱の症状を包括 | 最新の標準的呼称 |
■ 受診の目安
以下の症状がある場合は、婦人科での相談がおすすめです。
- 腟の乾燥や痛みが続く
- 性交痛がつらい
- 頻尿や尿もれが気になる
- 膀胱炎を繰り返す
- 市販のケアで改善しない
早めに治療を始めることで、症状の進行を防ぎ、生活の質が大きく改善します。
※排尿に関する症状は、必要に応じて泌尿器科専門医の診療を考慮する。
■ まとめ
GSM(閉経関連尿路性器症候群)は、閉経後の女性に非常に多い症状でありながら、「年齢のせいだから仕方ない」と我慢されがちです。
しかし、GSMは保険診療で改善できる疾患です。
腟の乾燥・性交痛・頻尿・尿もれ・膀胱炎の繰り返しなど、
気になる症状がある場合は、早めに婦人科へご相談ください。

【閉経後の性欲】低下する?上がる?
産婦人科医が解説する“閉経後の性の変化”
■ はじめに
「閉経したら性欲はなくなるのですか?」 「最近、性への気持ちが変わった気がする…」
閉経後の性欲については、多くの女性が気になりながらも相談しづらいテーマです。 実は、医学的には 閉経後の性欲は“低下する人もいれば、変わらない人、むしろ高まる人もいる” とされています。
ここでは、産婦人科医の視点から、閉経後の性欲の変化とその理由、対処方法をわかりやすく解説します。
■ 閉経後の性欲はどう変化するのか
1.性欲が「低下する」人
- 膣の乾燥・性交痛
- ホルモン(エストロゲン・テストステロン)の低下
- 疲労・ストレス
- パートナーとの関係性の変化
身体の変化や痛みがあると、自然と性への意欲が下がることがあります。
2.性欲が「変わらない」人
ホルモンの影響が比較的少ない人や、パートナーとの関係が安定している人は、閉経前と大きく変わらないこともあります。
3.性欲が「高まる」人
- 月経や妊娠の心配がなくなる
- 子育てや仕事から解放される
- 自分の時間が増える
- 心理的な余裕が生まれる
閉経後は「性を楽しむ自由」が増え、むしろ前向きになる方も一定数います。
■ 性欲の変化に影響する5つの要因
① ホルモンの変化
閉経によりエストロゲンが低下すると、膣の乾燥や性交痛が起こりやすくなります。 また、女性にも存在するテストステロンは性欲に関与しますが、閉経後もゆっくり低下するため、個人差が大きいのが特徴です。
② 膣の状態(乾燥・萎縮)
膣の乾燥や痛み(萎縮性腟炎)は性欲低下の大きな原因です。 保湿剤やホルモン療法などで改善すると、性欲が戻るケースも多くあります。
③ 心理的要因
閉経後はライフステージが変わり、心理的な余裕が生まれることがあります。 妊娠に対する不安や緊張が減り、性欲が高まることもあります。
④ パートナーとの関係性
コミュニケーションの質、安心感、信頼関係は性欲に直結します。 閉経後は夫婦関係が安定し、性への気持ちが前向きになる方もいます。
⑤ 健康状態
睡眠、運動、慢性疾患(糖尿病・高血圧など)は性欲に影響します。 健康状態が改善すると性欲も戻りやすくなります。
■ 閉経後の性欲は「異常」ではありません
閉経後の性欲の変化は、 “低下しても、変わらなくても、高まっても”すべて正常の範囲 です。
性欲はホルモンだけでなく、
- 心理
- 生活環境
- パートナーとの関係
- 身体の状態
が複合的に影響するため、個人差が非常に大きいのです。
■ 性欲低下が気になるときの対処法(一般的な医学情報)
1.膣の乾燥・痛みへのケア
- 膣保湿剤(モイストゼリー)
- ホルモン療法(エストリール腟錠・ホルモン補充療法:HRT)
- 摩擦を減らす工夫(体位を工夫する、ゆっくりと時間をかける、リューブゼリー)
痛みが改善すると性欲が戻るケースは多くあります。
2.心理的な不安の解消
性についての悩みは、話すだけで軽くなることがあります。 産婦人科で相談する方は増えており、特別なことではありません。
3.パートナーとのコミュニケーション
気持ちや不安を共有することで、関係性が改善し、性欲が戻ることがあります。
■ 実際の研究データ(一般的な医学情報)
閉経後の女性の
- 約30〜40%は性欲低下を感じる
- 約20〜30%は変わらない
- 10〜20%はむしろ性欲が上がる
と報告される研究もあります。つまり、閉経後の性欲は「低下するのが普通」ではなく、多様性が大きいのが特徴です。
■ まとめ
閉経後の性欲は「低下するのが普通」というイメージがありますが、実際はとても多様です。「低下する人」「変わらない人」「高まる人」どれも自然な変化であり、心配しすぎる必要はありません。もし性欲の変化や性交痛などでお困りの場合は、産婦人科で相談することで改善できることが多くあります。
■ 当院では
閉経後の性の悩みは、誰にでも起こりうる自然な変化です。 気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。